2019年4月2日火曜日

海外で感じた「物の価値」について(第9週 3/24 ~ 3/30)

 Bom dia!(ボンディーア!)
 とうとう華の20代が終わり,30歳となったお散歩隊員ジャッキーこと,白川です。
 たくさんのお祝いメッセージ,本当にありがとうございました!
 さて,最初に書いたのはポルトガル語の挨拶です。私の活動は今のところ午前中に行われるので,一日に少なくとも2~3回はこの言葉を使っています。日本語の「おはよう」です。ポルトガル語も日本語と同様に,時間帯で挨拶が変わります。

・Bom dia(ボンディーア,ボンジーア) → おはよう
・Boa tarde(ボアタルディ,ボアタージ) → こんにちは
・Boa noite(ボアノイティ,ボアノイチ) → こんばんは

という具合です。カタカナ読みはあくまで目安だと思って頂ければ……!
 そんなわけで,今週は色々とイレギュラーなこともあり,考えることもたくさんあったので,ちょっと予定を変更して,モザンビーク人の「物の価値観」について考えたことをツラツラ書いてみたいと思います。


☆エピソード① 日々のものの管理☆

 モザンビークに来て驚いたのは,意外ときれい好きなんだな,ということです。
 お店のディスプレイなんかものすごく凝ってるし,道端の露店ですら靴をきれいに並べ,野菜もわかりやすくひとまとめにして一山いくらと売っています。
 洋服についても同様です。シワシワのシャツなんてあり得ない,子供が着ている制服でさえ,きちんとアイロンがけされていたりします。

 ただし,それがすべての面について当てはまるかと言われると必ずしもそうとは言えません。
 例えば自分の家の周りは,毎朝掃き掃除をして,土曜の朝には草刈りしたり花を植えたりして,とても清潔きれいにしている家が多いです。私の任地は一応首都ですが,郊外の人口密集地なので,かなり古い家やボロボロの家もありますが,そんな家でも「きれいにしてるな」というのがわかる使われ方をしています。
 反面,共有スペースとなる道路や広場,学校などでは全く話が異なります。
 お菓子の袋やペットボトルは平気でポイ捨てです。黒板の前にオレンジの食べカスを捨てていた生徒に注意をしたところ,教室から出ていった矢先に外に向かって放り投げる,という場面にも遭遇しました。
 ジュースやビールの瓶が割れて危険そうなところを,小さな子供が裸足で歩いていたり,小学生が駆け抜けていったりもします。車の中からもポイ捨てをします。下手したら歩行者や対向車にぶつかるのでは…と冷や冷やすることも。
 (バナナの皮を窓から投げ捨てた時には,思わず〇リオカートを思い出してしまいました)


☆エピソード② 与える人と要求する人

 途上国というと,やはりイメージされるのは「物乞い」や「ストリートチルドレン」といった,言い方は悪いのですが他人にお金や物品を恵んでもらって生活できている人たちの存在でした。
 ここモザンビークにも,やはりそういった人は少なからずいます。首都マプトの中心街であっても,歩いていようが車で移動していようが,必ず1回は子供から声をかけられます。
 大概は「パンを買いたいから10mtくれ」「おなかがすいたからお金をくれ」といったことを言いながら,食べるジェスチャーをしたり,お腹を押さえたりして見せます。
 慣れた子供とそうでない子供もいるようで,最初からやや余裕な表情で「ちょっと困ってるんだよ」と近寄ってくる子もいれば,本当に切実そうな表情でいつまでもついてくる子供もいます。

 そういう人たちの事情は,確かにわからなくもありません。
 特にコネもなく,学校もどこまで修了できているかも定かではない。必然的に就ける仕事が限られます。そんな限られた仕事の枠でさえ,きっとかなりの競争率なのだと思います。働きたくても働けない,雇ってくれない。仕事がないからお金もない。生きていくうえで最低限必要な食物さえ手に入らないとあれば,道行くちょっと裕福そうな人……車に乗っていたり,こぎれいな服装をしていたり,外国に来る余裕がある人だったり……お金を持っていそうな人に少しでも分けてもらおうという気持ちはわからなくもありません。

 反面,モザンビークには「与える」価値観も少なからず存在しています。
 赴任前に行われた4日間の任地訪問の際に,数人の児童がお金を出し合って私にアイスクリームをごちそうしてくれました。さすがに子供におごってもらうのは……と思って払おうとすると,「なんでそんなことするの!?」と割と本気で怒られました。
 また一生懸命描いた絵をプレゼントしてくれる子供や,食べていたおやつをみんなにも分けてあげる子供など……「俺のものは俺のもの」では終わらない,他人と分かち合おうとする文化や価値観も少なからず存在するのかな,と思っています。


☆エピソード③ 欲求が先に立つ人々

 エピソード②で,生きていくために他人に要求する人については「わからなくもない」と書きました。ですが,いくらモザンビークが途上国とはいえ,もちろんそういう人ばかりが生活しているわけではありません。
 店舗や企業などでやとわれて働いている人,食料や衣類などの商品を用意して自分で売っている人,タクシーやチョペラ(3輪タクシー)を生業とする人……日本と同じように,様々な仕事を持った人々がモザンビークにもいます。
 驚いたのは,そういう人たちもすぐに「〇〇をくれ」と言うことです。
 警備員が「家に帰るシャパ(バス)に乗れないから20mtくれ」と言ってきたり。スーパーの店員が「帽子ちょうだい」「時計ちょうだい」を言ってきたり。学校に来た作業員が「俺の家族のために君のカメラをくれ」と言ってきたり……。

 おそらく断ったからと言って本気で困るシチュエーションではないのだと思います。
 現に「〇〇をくれ」に対してはすべて断っていますが,それで本気で不機嫌になられたり,ねちっこく言われたことは一度もありません。きっと言ってる本人たちも,もらえたらラッキーぐらいのつもりで言ってるのかもしれません。
 ただ,日本人としては,初対面で名前も知らない外国人に「それいいね。ちょうだい」とは言わないよなぁ……と思ったのですが,よくよく考えてみると……

 日本も敗戦したばかりのころは,米軍の人が見えるたびに「give me chocolate」を連呼したといいますし。自分たちより裕福な外国人に対しては,やっぱりそういう意識が働いてしまうものなのかもしれないなぁ……と思ったりもしたのでした。
 言われた時点では「なんでそんなこと聞くんだろう」「こっちには礼儀とか失礼っていう文化はないんだろうか」と色々考えてしまいましたが,日本や中国といったアジアの国々に対して,モザンビーク人が持っているイメージがそのまま言動になっているのだとしたら。アジア人は,自分たちとは比べ物にならない金持ちだと思われているのだとしたら。そりゃ色々ねだるのもわからなくもないよなぁ……と思ってしまいます。

 ただ,金持ちアジアンに対してはわかることもありますが。モザンビーク人同士でもその傾向はあります。上記のおやつを分けてあげた子供は,最初一人に分けたところ「俺も俺も」とたくさんの子供に群がられ,有無を言わずにおやつをむしり取られていました。
 またシャパに乗るときなども,決して列を作って待つことなどせず,目当てのシャパが入ってきたら一目散にダッシュ。他の人を押しのけてでも自分が最初に乗り込み座ろうとします。
 いい見方をすれば,チャンスを是が非でもつかもうとするハングリー精神。悪い見方をすれば,無秩序,ということなのかと思います。
 上のおやつの例なら,「食べるチャンスを何が何でもものにする」ための行動力も意思もありますが,それによって「最初の持ち主がどう思うのか」「他の子供がどう思うのか」は基本的に度外視です。そしてきっとその日は食べれたとしても次からは,分けてくれた子が学習して,誰にもおやつを分けないか,本当に仲のいい子だけにこっそりと分けるようになるでしょう。

 というのは日本人の考え方で,モザンビーク人にはまた全く違った価値観があるのかもしれません。まだまだわかりません。
 ただ,一定数の「欲求が先に立つ人」の存在がある,というのがここまでの私の印象です。


☆まとめ☆

 結論として何かが言えるわけではないのですが……!
 とにかく考えたのは,

 ①モザンビークは物資的には割と飽和状態?ゴミが処理しきれていない。
 ②「自分の空間はきれいに,その他は無頓着」「自分の欲求が先に立つ人の存在」→自分の範囲しか見えていない,狭い視野?
 ③反面,他人に優しくしようとする人の存在もある。

 こんなところでした。
 特に③に関しては,物をあげるだけではなく,道で困っている人がいれば手助けしてくれたり,シャパの中でおばあさんに席を普通に譲ってあげていたり,よくわかっていない外国人に親切に説明してくれたり……モザンビーク人は基本的に親切な人が多いです。そしてその親切に,何かしらの対価を求めようとすることもありません。ギブ&テイクではなく,ギブはギブ,テイクはテイクな価値観なのかもしれません。

 本当は週末に上げたかったこの記事なのですが,実は30になると同時に体調を崩し,昨日今日あたりに何とか持ち直してきておりました。それはもう,熱は上がるわ下痢は止まらないわの阿鼻叫喚地獄絵図……外国の地で自分は死ぬのだと本気で思いました(笑)
(実は20歳もインフルエンザとともに迎えた白川……10年おきに何かが起こるのかもしれません)
 体調崩している間の奮闘記なども,次回以降に織り込んでいきたいと思います。
 それから!モザンビークのお買い物・お店事情や,去る3月26日に行われた「東洋の星小学校開校記念祭レポート」も書いていきたいと思います!お楽しみに!



☆おまけ☆

 日本でも報道された(と聞いております)サイクロン「イダイ」に被災した中部の都市に向けて,わが小学校でも支援物資を送付する運びとなっていました。先生方はもちろん,各家庭からも衣料品や食料がたくさん持ち寄られ,ちょっとした小山になっていました。
 こんなところにも,モザンビーク人の「見返りを求めずに助けようとする文化」が見え隠れしているのかな,と思いました。

0 件のコメント:

コメントを投稿